たんたん座談会 |京都府北部地域で暮らす若者から見た「等身大の中丹」ってどんなところ?

かつて丹波国と丹後国の一部であった福知山市、綾部市、舞鶴市。 その地域が舞台となっている「たんたん食堂」開店に先立って、京都府北部地域で暮らす若者たちのリアルが知りたい! ということで座談会を開催しました。
第1回目は、京都府中丹広域振興局・企画総務部の岡部将志さん(23歳・Uターン)× tomos(※1)社会人スタッフの横山愛さん(23歳・Iターン)× 福知山高校3年生の山下紗世さん(17歳・綾部市出身)、そして私、並河が参加しています。
同年代の私たちと高校生にとっての「等身大の中丹」についてお話をしていく中で見えてきた、地域のあれこれ。課題と可能性は紙一重である印象を受けました。そして、それはきっと日本全国共通なのだろう、と。
(※1)tomos-人のココロに火を灯す-…京都の北部地域の中高生に向けて「新しい発見や異なる考え方に出会い、自ら未来(将来)を主体的に描け、行動できる人を増やす」ことを目的としています。「京都で学ぶ大学生」や「京都北部地域で活躍している素敵な大人」との出会い・交流する機会をつくります。
岡部将志(以下、岡部):そういえばさよちゃんは家から高校までどうやって通ってるの?バス?
山下紗世(以下、さよ):いえ、自転車で通っています。50分ほどかかります。雨が降った時はバスや送り迎えをしてもらいます。
-おお、なかなか体力勝負やね…。ちなみに岡部さんは通学時間どのくらいでしたか?
岡部:駅から歩いて10分!
-近い!私、トータル1時間くらいかかってました…というわけで、そろそろ始めていこうと思います。肩肘張らずにざっくばらんにお話ができると嬉しいです。
◆ 今、あなたにとっての「中丹」って?
-まず、今の自分にとって中丹ってどんな場所ですか?
岡部:う〜ん。地元、出身の地?笑
さよ:まだ出たことがないので、普通(笑)
岡部:高校3年生ということは、受験生になるのかな。受験の時は…?
さよ:出ます!
-地元の大学を受けるという選択肢はあったの?
さよ:少し考えたこともあるんですけど、大学進学以外だと中丹を出る機会がないなあと。
岡部:1回ぐらい外に出た方がいい気はするよね。自身を振り返っても、京都市内に住むことは結構大事な経験だったので。本当に京都市内は大学生しかいない!笑
-ここで暮らしていて、大学生と関わることってあんまりない?
さよ:関わる機会はあまりないです。いとこが大学生なのでそれぐらいで。
-そういうのがtomosの活動に繋がっているんやね。
◆ 一歩外から見てみる「地域」とは。
-中丹のすきなところや、ぶっちゃけ「う〜ん?」なところはありますか?
岡部:もうすぐ住んでトータル20年くらいになるんですけど、まだ正直見えないなぁ。探しているところ。結局中丹ってなんなんやろう? この仕事をしてみて特に思うこと。府外の人と話す時も少し苦労するんです(笑) 福知山・舞鶴・綾部なんですというとわかってもらえるのだけど。
さよ:地域的に隣り合っているけど、言葉が通じないこともある。噂では、舞鶴の人は福知山の人が嫌いとか(笑) 中丹っていう大きな括りはあるけれど、それぞれの「地域」としての意識がある。
横山愛(以下、よこあい):仲が良く見えていても、実際仲良くないということはざらにあるんじゃないかな(笑)
岡部:確かに、舞鶴と福知山は意識し合う。経済的にも文化的にも背景が違うので。
-なるほどなるほど。ところでよこあい、実際移住してみてどうですか?
よこあい:知り合いは増えるけど、同い年の人に出会わない! みんな車で移動するからかなぁ。街中にきっと眠ってる!笑
-(笑) そういえば岡部さんの高校の同級生達はどうされているんですか?
岡部:大体は大学進学と共に府外へ出て、そのまま帰ってこないです。戻ってきているのは公務員になった人くらい。仕事はあるけれど、「なりたい仕事」がない。
-それ、わかります。さよちゃんは、大学でこんな勉強をしてみたい! とか将来こんなことがしてみたい! とかあるのかな?
さよ:こんな仕事に憧れるな〜っというのはあります。それから、よこあいと出会って「政策」という言葉を知って。社会科から発展した勉強が好きだなあと思っていて、そういう大学の学科に進みたいです。
岡部:一度は今住んでいる地域を出て、初めてわかることがあると思う。
-よこあい、公立大(※2)が近くにあるのになんかごめんね(笑)
よこあい:正直、経済面とか何らかの理由で地元の大学に行く分は、ここに大学がある意味があると思う。でもやっぱり外に出ないとわからないことってめっちゃあるし、悪いことじゃないから。世界を広げてから、地元と天秤にかけて「帰ること」をポジティブに受け止められるタイミングでいいと思う。「帰ってこなければならない」という言葉を聞くとしんどそうやな〜って(笑)
- “地域から出て行く人を止める” とか人口そのものが減っているのに、“各地で引っ張り合う状況” ってなんか変やなぁと思っていて。その辺を同世代の人がどう考えているかを知りたいかも。
岡部:大学生の時に感じたのは、結構地元に戻ってきたいという人が多いということ。京都には全国から学生が集まっていた。自身が所属していたインカレのサークルでも、地元で働きたい人は結構いることがわかった。
それとは別に「京都(市内)に戻りたい」という人もいる(笑) やっぱり「京都市」はすごいし、魅力にとりつかれている人は多いから。でも、この職業だからこそ、京都市以外の京都の魅力も発信していかないと、とは思っています。
(※3)公立大…2016年4月1日に開学した「公立大学法人福知山公立大学」のこと。
◆「過疎」を武器にするか、衰退と捉えるか。
-京都市内にあって、この辺にないものって何があるでしょう?
一同:探せばたくさんあるんじゃないかな(笑)
-京都市内には行きますか?
よこあい:行くときは行く。でも、1日みておかないと時間がもったいない。特急で1時間、鈍行で2時間かかるから。
岡部:京都市内での会議の時間よりも移動時間の方が長いです(笑)
-なるどど…。そんな中丹エリアで高校生が「遊ぶ」としたらどういう場所をイメージしますか?
岡部:中丹の子らの「遊ぶ」は福知山が多いんじゃないかな〜
さよ:電車乗って福知山に行って、イオンやブックオフにバスで行く。
-となると、ここらへんの中心は福知山?
よこあい:そうかもね。イベントがあれば綾部に行くこともあるけど。
それでは、京都市内になくて、この辺にあるものって何があるのでしょうか。
◆「課題」と「可能性」は、隣り合わせ。

▲宮津の海
よこあい:例えば宮津市は観光資源があるから、その武器を強化していかに「生き残るか」ということに焦点を当てられるし、古民家再生等も力をいれている。まあ言い方は「生き残る」になるけどね(笑)
-この仕事をするようになってから、地方出身の方から「いつか戻りたい」と思っていても生活を考えると戻れない、とか “地域特有の閉鎖感” がニガテとか、顔見知りの範囲が狭い、という話もよく聞きます。
岡部:やっぱり田舎は関わる人が限られてくるからちゃうかな。そこしか知らないからイヤになるかもしれないけど、京都一の繁華街・河原町の「人・人・人!」を経験してようやく地域の良さに気づくのかもしれへん(笑)
ここの良さもあって改善点もわかる。 それがその人にとっての幸せだったら、それでいいんじゃないかなぁ。自分の地元に誇りを持てるような「何か」があれば帰って来るとも思う。
-この地域やったら暮らしていけると思えたらいいのかもしれませんね。
◆ 小さな変化が大きな一歩へ。
よこあい:さよちゃんは初め、私と会話するにも何か聞かないと答えてくれなかったけど、tomosを通してこうやって意見を言ってくれるようになった。だから大人と出会うのは意味があるのかな、と思う。
それから、他の地域の人と出会うのと、ここで住んでいる地域の人たちと出会うのは意味が全然違うことに気づいて。 この地域で暮らす方々は「地域と自分」が疎遠じゃなかった人たち。地域にいるのと消防団に入るのと感覚は一緒。だから「地域と関わるのは当たり前やのに、なんでそんなことするんや!」って言う人もいる。 でも、「それができてたらなんで人がでていくんですかね〜」って心の中でニヤニヤしながら聞いてる(笑)
-この地域に何があったら、どうやったら、ワクワクするんやろう?
さよ:今、私はとりあえず出てみたい。出た先でやりたいことがあればそれをするんだろうな〜と思っていて。でも時々帰ってくるという感じになると思う。
よこあい:「ワクワク」を考えた時に物理的条件が出てくることがある。京都市内から離れているのは、新幹線でも通さない限り変えようがなくて。ないものねだりをするのではなく、ある資源でどうにかする方がいいと思う。
-例えば、都会的な建物ってどうなの?市民交流プラザふくちやまやまちのばとか。
よこあい:建物など、外部的につくるとお金とスパンがかかる。若い人がまちに何かしら関わることで、この地域でおもしろいことをできる人が増えるかがワクワクするポイントかも。自分は、少し上の世代の地域で頑張っている人たちと話すとワクワクする。
-それはすごくわかる気がする。 ちょっと聞いてみたいのは、地域にとって都会的な建物は「ランドマーク」みたいなものになるのかなぁと思って。市民交流プラザを初めて見た時の印象ってどんな感じやった?
岡部:「えらいもんができたな〜」と地元の人は思っているんじゃないかな(笑)
さよ:初めて行ったのは絵本の読み聞かせのボランティアで、高校1年生の夏休み。「おお!ついに福知山が京都市みたいなん作った!」と同時に「遅れてんのか〜」って正直思った。
-そうなんか〜。 ところで今って、さよちゃんは地元の人たちとどのくらい関わってる?
さよ:登下校ですれ違うくらい。「いってきます」「帰りました」の関係。自分が住んでる町区の人とはたまに会って喋るくらい。
-うんうん、そのくらいよね。よこあいって滋賀県出身やんね?
よこあい:私は滋賀県やけど地方都市の街中の子。マンションの人は知っているけど、一歩外に出ると全くわからへんかったかなぁ。地域に関わるきっかけは、地区の運動会・清掃くらい。
-高校生の時に地域と関わることって必要なのかな。
さよ:tomosで関わるのは主に福知山の人。距離的にそこまで身近ではない存在だけど、福知山の人と話すきっかけはtomosしかない。
岡部:そういう経験ができているのはすごい! ええ経験。今後どんな職に就くのかわからないけど、他の人はめったにできないから。高校生時代、勉強しかしていなかったし…もう少し遊んだら良かった気もしてる。
よこあい:私が地域に興味を持ったのは、高校生の時。おじいちゃんの本家のある島根県雲南市は片田舎なんやけど、そこで初めて親戚の口から「日本の最先端をいってるんだ!」って、 “過疎” という言葉を聞いたのね。そんなに知り合いでもない人から聞く言葉って、当時の自分にとって意外と「非日常」だったりする。 必要かどうかと言われると、そういう概念がなくなればいいと思っている。当たり前になったらいいなって。でも、出会う「きっかけ」はいるよね〜って。
◆ 最後にもう一度、あなたにとっての「中丹」って?
-今日いろんな話をした上で、改めてどんなところでしょうか?
よこあい:「自分自身が歩める場所」
挑戦になるとハードルは高いけど、「おもしろいことをしたい!」と思った時に一緒に歩んでくれる人が沢山いるから。
岡部:「自分のルーツ」
高校までずっと福知山が全てだった。京都市内に住んでいた間も、ルーツとしてここがあったから違いがわかるようになった。戻ってきて働くようになって「地元」やから知っていることが沢山あるし、親身になれる。使命感というか、この地域に対して少し違った感情があるかな、と。
さよ:「今の私があるのは中丹のおかげ」
まだ生まれてからずっとここにいるからわからないのが本音。ただ、今の私があるのは中丹で吸収したものがあるから。純中丹じゃないけれど… 都会と比べたらないものや課題もあるけど、恵まれていると思う。何よりも人と出会えるし、全国を見ても「私しかできない経験」がここにある。だから私は恵まれている。
-すごい!こちらの背筋がスーッと伸びていくようなお話やね(笑)
よこあい:今のさよちゃんの話はFM丹波、いかる、舞鶴等々で流したいよね(笑)
こんなみんながいるから、中丹は安心だなぁと思いました。 皆さん、本日はありがとうございました。
◆ 余談:この世代が考える、今後の働き方って?
-今、地域に仕事ってどのくらいあるんですか?
岡部:正直、選ばんかったら本当になんでもある。働き口の絶対数はあるけど結局、その人が「したい仕事」がそこにない。
よこあい:介護の仕事など、この地域を支えていて、なくてはならない仕事は変えられない。でも、イメージなど、見せ方は変えられるのかな。あとは、選択肢として自分で仕事をつくれるタイプの人間が地域に行くとか、地域の人と何かを興すことも挙げられるかも。
ただ、そもそもの人口が違うから「商売で儲けよう!」と思った時にどこかに行くことは必須。ことを起こした時に続けることがネックで。 でも、上勝や神山(※徳島県)とかを見ていると地理的条件ではなく結局は「人」だと思う。
岡部:通勤ラッシュをくぐり抜けて仕事をせんでも、サテライトオフィス的に働けたら。田舎になるとどうしても大きな働き口が公務員。それ以外の選択肢が今は少ないのかな〜
-地域が必要としている「仕事」と、私たちがやりたい「仕事」が全然違う。今後、人手が確保できない部分はICTやロボットが補うことになると思っていて。自分の代わりにロボットが仕事をすることになったらどう思う? 可能性と同時に、ある種の危機感のようなものを感じることがあるんよね。
よこあい:便利になるのはいいけれど、人にしかできないことがきっとある。例えばこういう会話とか、感情を大事にするということ。私感情タイプだから特にそう思う(笑) ロボットに任せられるところは任せてしまったら効率もいいよね。
-今後進路選択をしていく上で「人にしかできない仕事」を視野にいれるのは面白いかもね。
◆ たんたん座談会、本日の会場「まぃまぃ堂」
福知山の昔ながらの新町商店街にある、国産小麦やオーガニックのナッツなど少しこだわった手づくりお菓子とフェアトレードコーヒー・フェアトレード雑貨のお店です。
特別でなく 毎日なものを・・・ 国産小麦やこだわり卵オーガニックの材料や地元で取れたものを出来るだけ使ってお菓子を作っています。 てづくりお菓子・フェアトレードの飲み物とゆったり自然や農家のこと フェアトレードや世界のこと 手仕事のことなどなど みんなが情報発信したり素敵なことに出会ったり いろいろなことが まぃまぃする そんなお店を作りたい!と思っています。 まぃまぃ堂 店主 よこがわ (HPより)お借りしました
まぃまぃ堂の雰囲気と、知子さんのお人柄、なんだかとってもほっこりできるんです。
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◆information◆
営業時間:11:00 ~ 19:00
休業日:月曜日・日曜日(不定休)
アクセス:京都府福知山市下新26
電話:0773-22-4686
HP:こちらへ
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