「人生に深みをプラスする《お出汁》って何ですか?」ー講師:竹原友徳さん|たんたん食堂レポート

2016年7月7日(木)に京都市内で開店した、たんたん食堂。京都府北部地域や田舎暮らしを知りたい人、地域の食材を活かした美味しいご飯が食べたい人、綾部出身の人、奥様に「行ってきて!」とお願いされた人、自分の人生を見つめ直したい人など、様々な方にご来店いただけたようです。食を楽しみながら、トークセッションやワークショップを通して、足を運んでくださった参加者の皆さんと一緒に「これからの暮らし」を考える会になりました。
◆たんたん食堂って?

Photo by Yuji Otsubo
京阪神にお住いの方々に、もっと中丹地域(福知山・舞鶴・綾部)を知ってもらうための「きっかけ」が作れないだろうかという想いで、京都府中丹広域振興局の企画振興室と(株)基地計画のメンバーで企画したイベントです。
まずは、大学生を中心とした若者に中丹の「食」や「人」を知ってもらうこと。そして、このイベントを機に京都府北部地域へ足を伸ばしていただけると、嬉しくて頬が勝手に緩んでしまう企画です(笑)
また、これまで様々な転機をご経験されてきた講師の方々の職業観や人生観が、今後わたし達の「暮らし方」のヒントになるといいなとこっそり思っているイベントでもあります。
そんなたんたん食堂第2回目のゲストは、京都府綾部市志賀郷出身の竹原友徳(たけはら とものり)さん。「うどんを喉で味わう」青春時代を綾部で過ごし、大学進学と共に故郷を離れ、9年の月日を経て、現在は地元で竹松うどん店を営まれています。
竹原さんが暮らしている志賀郷は、綾部駅から車で約20分。綾部市の人口33,000人の内、1,400人あまりが暮らしている田園エリア。大自然に囲まれているこの地域は移住促進にも力を入れており、和紙職人さんや絵本作家さん、木工作家さんなどが移り住んでこられました。そんな志賀郷地区も、半数近くが高齢者。竹原さんは、うどんで地域を盛り上げよう!と日々奮闘されています。
◆「石の上にも三年」という決心
当日はまず、竹原さんに通常のお店スタイルでおうどんを出していただきました。本日のメニューは、せせりうどん、万願寺甘とうと舞鶴のトビウオの天ぷら、瀬戸川農園の賀茂茄子のあげびたし。
トークセッションが始まるまでは、近くに座った参加者同士で名前・所属・来た理由・今日期待することをお話ししてもらいました。そして、事前に取材して作成した告知記事を元に竹原さんの「これまで」を振り返るところからスタート。

同級生達と「うどんはのど越し!噛んでくちゃくちゃ食べていたらトリプルの壁は超えられん!」と言っていた頃。 写真提供:竹原さん
幼少期からうどんが好きで、高校時代は “うどんといえば竹原くん” と言われていた。「トリプル(替え玉3つ)」の壁を越えるために同級生たちとうどんを喉で食べる日々。大学時代は「うどんが打てるようになりたい!」という思いから、長期休暇を利用してヒッチハイクでうどんの本場・香川へ。当時は教員になろうと免許も習得していたが、大学卒業後に3年間の本格修行。その後、2年かけて「日本一周うどん行脚の武者修行」へ。2008年10月に修行を終え、志賀郷にUターン。地元にも、全国にもファンがおられるうどん屋さんを営む。
話をお伺いする中で、将来という漠然としたものを考えながら、葛藤の末に「石の上にも三年」と覚悟をされたことが印象的でした。当初は「いつかうどん屋さんをしよう」くらいに思っておられたのですが、下宿先でのうどんパーティや学園祭への出店を通して少しずつ気持ちに変化が表れます。周りが「就職」するタイミングで「修行をしよう!」と決心することは勇気のいること。

修行時の竹原さん。 写真提供:竹原さん
竹原さんのお話を通して、「人」と「挑戦させてくれるフィールド」に出会うためには、やっぱり行動あるのみ! な気がしました。 なぜなら、大学生の竹原さんがたまたまヒッチハイクした相手が、地域で割と発言力のあるおばちゃんだったのですから(笑)
相手の返答なんてお構いなしに、山内うどん店の大将に「今から連れて行くから」のひと言で電話を切ってしまわれました。 初めは正直乗り気でなかった、修行先の山内うどん店さん。見ず知らずの学生が修行をしたいといきなりやってきても、少し悩みますよね。ですが、竹原少年の熱意を受け取って、修行のチャンスをつくってくれました。 そして竹原さん自身も、チャンスをものにしていけるよう行動されていました。
“人生、若いうちしかいろんなことはなかなかできない。”
お店を構えてしまうと大好きな旅が気軽にできなくなると思い、修行後は2年間のうどん行脚の旅へ。
(秘密にしていたはずの師匠にバレ、少し呆れられたようですが…笑)
旅のスタートは、全国から旅人が集まる礼文島。知り合いになった人伝いで旅が進んで行きます。次第にあちらこちらから「今度うどんパーティを開いてほしい!」という依頼が舞い込んでくるように。

写真提供:竹原さん
-旅の中で、一番印象的だったことは何ですか?
竹原:群馬県の水沢うどん屋さんを訪れたときの出来事です。店主が「君は竹ちゃんだろ?」と声をかけてきたんです。取材を受けていた関東ローカルのドキュメンタリーのTV放送を見たと、そのまま闘いを申し込まれまして(笑)
店主は自分に一通りの仕込みを見せてくれ、「どうだ、明日このうどんを食べてみたいだろう? そして、お前のうどんも食べてみたい。」と言いました。 そして迎えた決戦の日。スタッフさんは讃岐仕込みの僕のうどんを「おいしい」と食べてくれたのですが、店主は「俺には麺が硬いけど、手打ちの讃岐うどんをそうやって全国に広めることはいい取り組みだ!」と言ってくれました。この 闘いを通して水沢うどんの大将と友情が芽生えました(笑)
(なんだか漫画みたいですよね。笑)
全国を回った目的は、食材を探すこと、全国のうどんを食べ歩くこと。それから、嫁さん探し(笑)
そして栃木県の益子で奥さんと出会われます。うどんに乗せるかき揚げを上げてくれていたそう。「たえちゃんかき揚げ上手ね〜このままお嫁になっちゃえば?」と周囲も薦めます。 そしてここでお付き合いが始まりました。その後も竹原さんは旅を続け、約1年半に渡る移動型遠距離恋愛の末、結婚。大きな旅の収穫だったと竹原さんは振り返られます。

お店の壁を塗っています。 写真提供:竹原さん
セルフビルドで建てた現在の店舗は、地域の方々だけではなく、東京からやってきた塗り壁隊の方々とも一緒に作り上げたもの。「壁塗り 素人 [検索] ↖︎ 」で検索してみると見つかったそう。 そうやって、いろんな人が関わってみんなで作った竹松うどん店。

「うどんを喉で食べて!」という私の無茶振りにも答えてくれる竹原さん。
-そんな竹原さんの、人生に深みをプラスする「お出汁」って何ですか?
人との出会いです。 うどんに例えるなら、「うどんが男で、お出汁は女」お互いを活かしあえるそんな存在。
その後、参加者同士で共有タイムに入ります。竹原さんに聞いてみたいことや、自分自身のこれから、そして自分にとっての「お出汁」について。
「働いて流した汗かなぁ…」「やっぱり出会いだと思う!」「“旨味” 昆布と鰹節の相乗効果、それは単品で味わう以上の関係性になる!それは人生にも言えますね。」という声、「大事な人 支えにもなってくれているし、プラスの効果をあたえてくれる。」「奥さんは自分の人生に花を添えてくれる存在。」という声がありました。
その他にも、「自分がやっている仕事って本当に楽しいのかな?って少し考えてしまいました。」という感想や「楽しいことをつくることが出汁になるのではないかと思う。それが仕事にできたら一番いい!」など、皆さんの《お出汁》も様々で、素敵でした。
◆参加者からのご感想
参加者の方々にご協力いただいたアンケートには、
「“実行する” っていうのが大事やし、すごいなって思った!」「人との関係性をよりよくしていくために自分には何ができるのか、どんな空間をつくるのか、、考える機会になった。」「さっそくボイストレーニングに通おうと思った!」というご感想や、「働くということについて、もう一度見直してみたいと思いました。」「楽しみながらいろいろと話が聞けたので良かったです!」というご感想がありました。
「またせせりうどんを食べるために、竹原うどん店に行ってみたいです!」という方もおられ、ぜひぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。
◆グラフィックレコーディングって?
お気づきでしたでしょうか?会場の右側で模造紙の上にショートヘアーの女の子が何やら一生懸命描いてくれていたことを。 ライブ形式で描いていくこちらの絵図はグラフィックレコーディングといい、その場の状況を「見える化」する技法のことです。
その場で話されていることを模造紙に図式化していきながら、参加者の認識を一致させることを目的としています。話し合いやイベントの進度が見えてくると、議論の足りていない部分が明確になったり、理解力があがったりしますよね。 たのちゃん、ありがとう!
◆おわりに
「今年は例年以上に力を入れて花火大会しますよ〜」と竹原さん。実は8月14日は志賀郷で花火大会があるんです!皆さんぜひぜひ、足を運んでみてください♪ 最後に竹原さんより…
やろうと思ってからやるまでは少しためらいもあるが、「ダメでもいいや」くらいのスタンスでやってみたら案外いい出会いがあって道が開けると思っています。
今回のお話が、皆さんの今後のヒントになると嬉しいです。
◆information◆
今回の会場Social Kitchenは3階建ての建物で、カフェ・イベントスペース・オフィスが一緒になっています。
Social Kitchenは21世紀型公民館として機能することを目指しています。多様な背景を持つ人たちが、集まり、会話し、議論し、学び、実践する場になればと考えています。 Social Kitchenの1階は喫茶&本屋さん、2階はレクチャー、討論会、勉強会、ワークショップ、バザー、ミーティング、展覧会、パーティー等々に使用できるスペース、2階はシェアオフィスとして使用します。Social Kitchenを使って何かをしたい人はアイデアを持って来てください。(HPより)
当日、イベントの準備をしていると、近所の方が「今日だけ?またやって欲しいわ〜」と声をかけてくださいました。
住所 |
602-0898 京都市上京区相国寺門前町699 |
アクセス |
地下鉄「鞍馬口」から徒歩5分 |
オープン時間 |
HPをご確認ください。 |
HP |