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2016年9月26日

まもなく、たんたん食堂が開店します。|「家業と向き合い、帰郷を決める」-荒砂尚樹さん

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みなさんは、これからの「働き方・暮らし方」にどのようなイメージをもっていますか?ひとえに「これから」と言っても、数学のテストのように「1つ」の答えがないから難しい。 まあ、なんとなーくでいいんだと思います。食を楽しみながら、地域の職や日常のお話を聞きながら。なんとなーく「これから」をみんなで考えてみませんか?

そんな「食堂」があったらいいな…。 というわけで、作っちゃいました!

その名も、「たんたん食堂」(注1)

今回は、京都府福知山市の雲原というところで「大江山 鬼そば屋」を営まれている荒砂 尚樹さん(以下、荒砂)にお話をお伺いしました。

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荒砂 尚樹(あらすな なおき)さん:生まれ育った福知山市雲原が好きで、そばも好き。子どもの頃は周りを喜ばせたくて「家業を継ぐ」と言っていたものの、鬼そば屋を継ぐ気は全くなかったそう。ある時から歯車がずれだした実家と、火の車になっていた家業。大学進学と共に一度地元を離れ、部活動やバイトに打ち込む日々。その後、家業と向き合うために経営コンサルタントになり、1年半で地元へUターン。見事に家業を立て直されます。帰郷後は、地域の取り組みに参加し、立候補で区長になり、ひと段落した今年は、荒砂さんにとってターニングポイントになる予感。

注1)たんたん…かつて丹波国と丹後国の一部であった福知山市、綾部市、舞鶴市のこと。

◆本当は「仮面ライダー」になりたかった子ども時代

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▲以前いただいた鬼そば。すすった時の食感がとても良く、噛むと香りが口の中で広がります。

-子どもの頃からそば屋になりたかったんですか?

荒砂:いえ、そんなことはなくて。理由も明確でした。「そば屋を継ぎます!」と言うと周りの大人たちが喜んでくれたからそう言っていたんですよ。でも、当時は全く継ぐ気がありませんでした(笑) 本当は「仮面ライダー」になりたかったんです…

ある日、店をお手伝いしていると、お客さんが「いつもがんばってんね〜」と100円をくれたんですよね。この時、いいことをするとお金がもらえるかも! と幼いながらに対価と報酬の関係を学んだ気がします(笑)

(ちょっと早すぎませんか。笑)

 地域の方々やお客さんとのコミュニケーションの中で、次第に「自分が笑っていると周りも笑ってくれる」ということに気づいた荒砂少年。

◆演劇にはまる高校時代

-小さい頃は何をされていたんですか?

荒砂:小学校は人数が少なかったので、全員がなんでもクラブ。その日ごとにスポーツや料理など活動内容が決められていました。中学校は全校生徒が一番多い時で20名ほどだったこともあり、有無を言わせず全員陸上部。 部活以外では、昔からお笑いが好きだったので、テレビで漫才を見ながら笑いの取り方を勉強していましたね。

そんなある日、姉の公演を見に行ったことがきっかけで「演劇」と出会いました。内容よりも印象に残ったのは、最後のカーテンコール。謝辞を述べるお姉さんが輝いて見えたんです。その時、「自分もあの舞台に立ちたい!」と強く思いました。

-演劇のおもしろさって何ですか?

荒砂“観客のツボがわからないと笑わせられない” というところですね。一対一ではなく、複数の観客を笑わせなければいけないところに魅力を感じました。 演劇を楽しみに入った高校。入部当初は男子1人でしたが、2年生になった時、新入生の入部オリエンテーションを「打ち合わせ」と偽り、当時音響を手伝ってくれていた同級生を入部させました(笑)

その後、男子の後輩ができて男子部員が3人になり、演目の幅も広がりました。 副部長になり大会用の台本作りをしていたのですが、笑いに寄せて練りすぎて話の本筋がわからなくなってしまったことがあちました。狙ったポイントで会場は湧かせられたのですが、メッセージ性がボヤけてしまった作品。「やっちまったなぁ」という経験でしたね。

◆初めて、地元を離れて暮らしてみる

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▲鬼そば屋周辺ののどかな風景

-大学進学と同時に地元を出られたんですか?

荒砂:はい。実はこの頃家族の歯車が合わなくなってきていました。それに比例して火の車になっていく家業。そんな厳しい状況は、当時の自分には簡単に受け入れられるものではありませんでした。 一度地元を離れようと、滋賀県の大学へ進学。

学部は経済で、合気道部に入部しました。対人の格闘技ではないので、部員がオタクばかりならやめようと思っていたのですが、見学に行き本気で取り組む先輩を見て入部を決意。高校の時以上に部活に打ち込みます。やっぱり人を笑わせることが好きで、大学時代も部活用の一発芸ばかりを考えていましたね(笑)

鬼そば屋の経営が苦しいことがわかっていたため、後ろ髪を引かれるような思いも同時に持ちながら、悶々と。そんな大学生時のキーワードを振り返ってみると、「哲学・音楽(ドラム)・格闘技」

当時ハマっていた武術系のマンガから学ぶ哲学や、子どもの頃からしていたドラム。そして、大学生で始めた合気道。 行き場のない気持ちを、これらに注いでいたのかもしれません。そして合間はバイト三昧。気がつけば単位修得に必死の4年間でした。ギリギリすぎて、未だに悪夢として出てくるほど(笑)

(失礼ながら「うそ!」と思わず言ってしましました。笑 結構みなさんメガネに騙されるんですよ、と荒砂さん。)

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荒砂:大学に入った目的は人脈をつくることでした。本当に必要なことは「社会」にあると実戦的な学びを大事にしていましたね。そう思えたのは地域で育ったおかげです。 帰るつもりはなかったのですが、身近な一番のモデルケースが実家だったため、経済学や経営学の還元先は常に鬼そば屋でした。

次第に「どうすれば?」と無意識のうちに考えてしまう。厳しい現実に向き合うのが怖かったのだと思います。

そんな2回生時の部活の合宿の時に、 素直に受け入れる” 経験をしました。どんな厳しい状況でも、 苦しいのは自分だけじゃない、と背景にあるいろんな人の想いを考えるようになったんです。 合宿後、 地域のおかげで、店のおかげで、今の自分がある” と思うようになり、親に対して感謝のメールを送りました。この時、自分なら実家をどうにかできるかもしれないと思うようになりました。

◆地元に帰る宣言をした、最終面接

-前職は何だったんですか?

荒砂:前はコンサルタントとして働いていました。

就活では、まず自分の身を立てることを最優先にし、その後、母へ仕送りでもできればと思いながら就職先を探していました。大学時代に勉強した「経営」をより実戦的に学びたい、とコンサル会社を志望。ところが、最終面接の少し前に、小中一貫校になるはずだった母校の休校・閉校の知らせを受けて廃村の危機を感じ、いつか帰ろう” という気持ちが早まりました。

最終面接で「何か質問はありますか?」と社長に聞かれ、「こういう事情でなるべく早く地元に帰りたいのですが、地元に支社をつくる、もしくは経営を1から10まで学ぶことはできますか?」と。

「一応これ最終面接なんだけど…でも目的がはっきりある人の方が吸収力があるから考えとくよ」と言われ、内定をいただきました。

(なかなかないですよね。笑)

入社後は介護の新規事業を立ち上げるメンバーに抜擢され、初っ端から赤字施設の改善新施設立ち上げという仕事。「振り返るとめちゃくちゃブラック(笑)」休日どころか、休み時間がない。24時間連勤が7日間続いていました。でも「学びたい」と言ってしまった手前、実績をつくるためにもやるしかなくて(笑)

それもすべて地元のため、と 1年目でエリアマネージャーになり、残りの半年で後輩を育てて自分のポストを次につないでいきました。社長も「次を育てられたら抜けていいよ」と言ってくれていたので。ここで経営の基本を学びました。

◆帰省後、改めて見えた地元と地域のこれから

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-雲原へはいつ頃戻られたんですか?

荒砂:2011年10月、24歳の時に戻りました。この頃、大学生時からお付き合いをしていた今の奥さんと結婚したのですが、正直、場所が場所なだけに一緒に帰るのが不安でしたね(笑)  

戻ってきてから目に映る地元は、これまでとは違って見えました。まずは家業を立て直すところからスタート・苦渋の決断もありましたが、黒字化に成功しました。帰郷してから早5年、29歳になった今年は鬼そば屋としてステップアップの時期でもあるんです。

役者が揃いはじめ、地域を次のステージへ。

ターニングポイントになりそうなタイミングで地域に移住してくる同世代が現れたり、姉夫婦も農業をしに移住してきたり。

“徐々に役者が揃ってきた” 

ふと、脚本を書いていた頃の感覚が蘇ってくるのではないでしょうか。そんな荒砂さんが作っていく雲原のシナリオとは。

-最後になりましたが、

自分と地域を《つなぐ》食と職

についてお伺いしてもいいですか?

***

荒砂さんのお蕎麦をすすりながら、自分たちの「これから」についてなんとなーく考えてみるイベント「たんたん食堂」がこの10月に開催されます! ぜひ、会場へいらしてください。

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<詳細>

▶︎10月24日(月)18:30(開場)19:00(スタート) @Social Kitchen 1F 2F

住所:602-0898 京都市上京区相国寺門前町699 Social Kitchen

アクセス:地下鉄「鞍馬口」徒歩5分

▶︎学生 500yen 社会人 1500yen 参加申し込みはこちらへお願い致します。